シャチ竹の薬剤師力スキルアップ

薬の知識は膨大で覚えてもすぐに忘れしまう。だからこそ公衆の面前にさらすことでその知識を定着化させ、さらに間違いを指摘してもらうことであわよくば知識の研磨を図る

アテローム血栓性脳梗塞の薬物療法

1:発症からの経過時間によって決まる薬物療法

  • 発症5hr以内

 禁忌事項(抗血栓薬有無等)に該当なければt-PA使用

 投与量:0.6㎎/㎏

 注意:出血性梗塞(虚血部位が血栓溶解にて再開通する際にもろくなっているため出血症状をきたす)

 

  • 発症24hr以内

エダラボン:フリーラジカルによるの細胞障害から脳を保護する

投与期間:1-2週

注意点:投与初期の腎機能低下、血球減少

 

  • 発症48hr以内

抗血小板薬・抗凝固薬(アルガトロバン)の投与

*アルガトロバン投与の条件は【発症時間】と【梗塞巣の大きさ(1.5㎝以上)】

*オザグレルは【発症5日以内】まで可とやや範囲が広い

 

2:急性期の抗血小板薬の選択肢は? DAPTそれともSAPT?

  • 内服管理であれば【バイアスピリン®】【クロピドグレル】【シロスタゾール】が当院では大半を占める

【バイアスピリン®】

 〇:心血管イベント、脳梗塞再発に有効

 ×:脳出血、出血性梗塞の増加、消化器症状の惹起

【クロピドグレル】

 〇:アスピリンと比較して有効性・安全性が高い(脳梗塞単独では同等)

 ×:CYP2C19の基質=日本人は2C19がPMの人が20%程度いるためクロピドグレルの効果が

不十分になる可能性

【シロスタゾール】

 〇:アスピリンと比較して有効性同等、安全性が高い

 ×:血管拡張作用による頭痛、頻脈の副作用あり→心疾患既往の患者には使用注意

   (うっ血性心不全患者には禁忌)

 

  • 適応の違いから選択肢を考える

【バイアスピリン®】:冠動脈疾患

【クロピドグレル】:冠動脈疾患・末梢動脈疾患

【シロスタゾール】:末梢動脈疾患

→複数の既往を持つアテローム血栓脳梗塞であれば、【クロピドグレル】が選びやすい?

 

  • DAPT VS SAPT

国内、海外で様々な試験が行われ、議論されていますが、現在の最新の知見は・・

★DAPT期間を【2週-3週】に短期化することで有効性と安全性の両立を図る

 (CHANCE試験で検索していただくと、試験概要が出てくると思います!)

長くとも3週以降は出血リスクが治療メリットを上回ってくるため、SAPTへの切り替えを提案明日法がよさそうですね。

 

じゃあ、その組み合わせは?といった流れになりますが、現在【アスピリン+シロスタゾール】【アスピリン+クロピドグレル】にて試験を行っているとのことから結果が待たれますね。

脳梗塞に使用される抗血栓薬の使い分け

 脳梗塞にて患者が入院してきた!

この人は「バイアスピリン+オザグレル」、この人は「バイアスピリン+アルガトロバン」、この人は「ヘパリン」、どうしたら何を使うのかあやふやである。Drが使用薬剤を間違えている可能性もあり、このままでは疑義もできない!それではまずい!

→抗血栓薬の使い分けに関して調べて知識を残そう!

 

1:脳梗塞の病型

脳梗塞は大きく分けて3種類に分かれる

 

【心原性脳塞栓】:心房細動や心筋梗塞等により心臓内で発生した血栓(フィブリン血

         栓)が脳動脈を 閉塞させて起こる

ラクナ梗塞】:脳動脈から派生した穿通枝領域に起こる小さな(15㎜以下)の脳梗塞

→それぞれ原因となる血栓ができる血管が異なり、そこが使い分けのポイント

 動脈に血栓発生:アテロームラク

 静脈に血栓発生:心原性(心臓の静脈に血液の還流障害にて発生)

 

2:抗血栓薬の種類(当院採用に限る)

血栓溶解薬】:アルテプラーゼ(グルトパ®)

【抗血小板薬】:オザグレル、クロピドグレル、プラスグレル(エフィエント®)、

        シロスタゾール、アスピリン(バイアスピリン®)

【抗凝固薬】 :アルガトロバン、ヘパリン、DOAC(エドキサバン(リクシアナ®)、

       ダビガトラン(プラザキサ®)、アピキサバン(エリキュース®)、

       リバーロキサバン(イグザレルト®))、ワルファリン

【その他】  :エダラボン、濃グリセリン(グリセレブ®) 

                                                                                                                         

→当たり前のことであるが、これらの中で現時点にできてしまっている血栓を縮小されることはできるのは【血栓溶解薬のみ】である。それ以外は全て【再発・増悪予防】である

 

3:使い分け

 血栓の発生源を考慮すると・・・

【アテロームラクナ】→抗血小板薬

【心原性】→抗凝固薬

 これで概ね正しい!

しかし、一部注意!!【アルガトロバン】を使うのは【アテローム】のみである!

急にややこしい!!では、使用するのはどんな時か

 

4:アテローム血栓脳梗塞にアルガトロバンを使用する場合

 ポイントは2つ!

 【発症48時間以内】+【病変の最大径が1.5㎝を超すような大きな梗塞】

 発症初期は凝固能が亢進しており、増悪リスクも高く、それは広範囲の梗塞によればなおさらである

 そういった場合にアルガトロバンを使用することで【オザグレル】と同程度の有効性が報告されている。ただし、国際的なエビデンスは低く、アルガトロバン。オザグレルともに【国内生産】であることから日本で使い続けられている背景もある・・・

 

5:アルガトロバンとオザグレルの使い分けは?

 4で示したアルガトロバンとオザグレルの同等の有効性、では使い分けはいかに?

 ポイントは【発症からの時間】と【梗塞巣の大きさ】

【発症からの時間】

 添付文書より

 アルガトロバン:発症から48時間以内に~

 オザグレル:急性期(発症5日以内に)~

【梗塞巣の大きさ】

 また、梗塞巣が1.5㎝以上の広範囲の脳梗塞の場合はアルガトロバンが推奨されている

 

よって、大きな脳梗塞にて発症から48時間以内であれば【アルガトロバン】、そうでない場合は【オザグレル】といった使い分けになる

 

これまで発症後の時間はt-PAの適応かどうかぐらいしか見てこなかったし、梗塞巣の大きさなんて全くでした。見るポイントも変わってきますね。