シャチ竹の薬剤師力スキルアップ

薬の知識は膨大で覚えてもすぐに忘れしまう。だからこそ公衆の面前にさらすことでその知識を定着化させ、さらに間違いを指摘してもらうことであわよくば知識の研磨を図る

脳梗塞に使用される抗血栓薬の使い分け

 脳梗塞にて患者が入院してきた!

この人は「バイアスピリン+オザグレル」、この人は「バイアスピリン+アルガトロバン」、この人は「ヘパリン」、どうしたら何を使うのかあやふやである。Drが使用薬剤を間違えている可能性もあり、このままでは疑義もできない!それではまずい!

→抗血栓薬の使い分けに関して調べて知識を残そう!

 

1:脳梗塞の病型

脳梗塞は大きく分けて3種類に分かれる

 

【心原性脳塞栓】:心房細動や心筋梗塞等により心臓内で発生した血栓(フィブリン血

         栓)が脳動脈を 閉塞させて起こる

ラクナ梗塞】:脳動脈から派生した穿通枝領域に起こる小さな(15㎜以下)の脳梗塞

→それぞれ原因となる血栓ができる血管が異なり、そこが使い分けのポイント

 動脈に血栓発生:アテロームラク

 静脈に血栓発生:心原性(心臓の静脈に血液の還流障害にて発生)

 

2:抗血栓薬の種類(当院採用に限る)

血栓溶解薬】:アルテプラーゼ(グルトパ®)

【抗血小板薬】:オザグレル、クロピドグレル、プラスグレル(エフィエント®)、

        シロスタゾール、アスピリン(バイアスピリン®)

【抗凝固薬】 :アルガトロバン、ヘパリン、DOAC(エドキサバン(リクシアナ®)、

       ダビガトラン(プラザキサ®)、アピキサバン(エリキュース®)、

       リバーロキサバン(イグザレルト®))、ワルファリン

【その他】  :エダラボン、濃グリセリン(グリセレブ®) 

                                                                                                                         

→当たり前のことであるが、これらの中で現時点にできてしまっている血栓を縮小されることはできるのは【血栓溶解薬のみ】である。それ以外は全て【再発・増悪予防】である

 

3:使い分け

 血栓の発生源を考慮すると・・・

【アテロームラクナ】→抗血小板薬

【心原性】→抗凝固薬

 これで概ね正しい!

しかし、一部注意!!【アルガトロバン】を使うのは【アテローム】のみである!

急にややこしい!!では、使用するのはどんな時か

 

4:アテローム血栓脳梗塞にアルガトロバンを使用する場合

 ポイントは2つ!

 【発症48時間以内】+【病変の最大径が1.5㎝を超すような大きな梗塞】

 発症初期は凝固能が亢進しており、増悪リスクも高く、それは広範囲の梗塞によればなおさらである

 そういった場合にアルガトロバンを使用することで【オザグレル】と同程度の有効性が報告されている。ただし、国際的なエビデンスは低く、アルガトロバン。オザグレルともに【国内生産】であることから日本で使い続けられている背景もある・・・

 

5:アルガトロバンとオザグレルの使い分けは?

 4で示したアルガトロバンとオザグレルの同等の有効性、では使い分けはいかに?

 ポイントは【発症からの時間】と【梗塞巣の大きさ】

【発症からの時間】

 添付文書より

 アルガトロバン:発症から48時間以内に~

 オザグレル:急性期(発症5日以内に)~

【梗塞巣の大きさ】

 また、梗塞巣が1.5㎝以上の広範囲の脳梗塞の場合はアルガトロバンが推奨されている

 

よって、大きな脳梗塞にて発症から48時間以内であれば【アルガトロバン】、そうでない場合は【オザグレル】といった使い分けになる

 

これまで発症後の時間はt-PAの適応かどうかぐらいしか見てこなかったし、梗塞巣の大きさなんて全くでした。見るポイントも変わってきますね。